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2016年06月28日

円筒殻の座屈解析(提灯座屈とダイヤモンド座屈)

今回は,円筒殻の座屈解析です。
以下の文献を参考にさせていただきました。ありがとうございました。

1)後藤芳顯,張祟厚:比較的厚肉の円筒殻における提灯座屈からダイヤモンド座屈への塑性分岐過程の解析,土木学会論文集,No.605,T-45,pp.105-115,1998.10.

上記の文献は下記からダウンロード可能です。
土木学会ホームページトップ>書庫 学術論文等公開>公開対象リスト>土木学会論文集>平成10年(1998) 605号

文献のまえがきからですが,軸圧縮力を受ける短い鋼製円筒の塑性座屈では,厚肉円筒殻では軸対称の座屈が,薄肉円筒殻では非軸対称の「ダイヤモンド座屈」と呼ばれる現象が支配的となるそうです。土木や建築分野で用いられる,比較的厚肉の円筒殻の場合には,最初に軸対称の「提灯(ちょうちん)座屈」というものを生じ,さらに変形を大きくしていくと,次第に「ダイヤモンド座屈」へと移行していくことが実験的に確認されているとか。このような座屈現象は「分岐問題」といわれていて,異なる座屈モードへと飛び移ることが起きているようです。このときの軸方向の荷重と軸方向変形量の関係を絵にするとこんな感じ。

01_両端固定円筒殻の座屈つり合い経路.png

薄肉円筒の場合は,さらに分岐点がたくさん出てきて,軸方向荷重が何度もガタンガタンと飛び移る現象が観察されるそうです。現在の汎用ソフトでは,非常に細かいメッシュ分割とした場合,このような高次のシェルの座屈モードをトレースすることが可能になることが報告されています。

2)三原康子,小林卓哉,藤井文夫:軸圧縮を受ける弾性円筒シェルの後座屈解析,日本機械学会論文集(A編),77巻,776号,pp.582-589,2011.04.

文献2)のように,高次座屈モードを完全にトレースするまでいかなくても,手もとのソフトで,「ダイヤモンド座屈」というものを再現できないだろうかと思って,文献1)の解析ケースのひとつである,C8 typeの諸元をもとにシェルの座屈解析を実施しました。円筒殻は半径R=100mm,高さL=300mmで,C8 typeの場合の円筒の厚さはt=0.9mmであり,解析では,提灯座屈からダイヤモンド座屈へ移行したことが示されています。

解析モデルです。提灯座屈が発生すると予想される上下端の各1/4部分は要素分割を比較的密にしています。それでも文献2)に比べると10倍以上の要素分割の粗さです。
下端の節点を完全固定とし,載荷側上端の節点は剛梁で結んで,変位制御で軸方向に載荷しました。

02_解析モデル_01.png

03_解析モデル_02.png

解析結果です。正面から見た時の変形状況。変形倍率を5倍としています。載荷初期には,上下端付近が外側に膨らみ,「提灯座屈」を生じました。さらに強制変位を大きくしていくと,次第にシャンプーハットのようにクシャッといきました。

04_変形状況_正面.gif

斜め上からみたときの,変形状況。
上下端が外側に膨らんだ後,周方向に規則的に波打ち,六芒星のような形状に変形しました。
解析に成功したようです。

05_変形状況_俯瞰.gif

「提灯座屈」を生じた時点の変形状況を上から見たもの。円周方向に均等に膨らみ出しています。

06_座屈状況(提灯座屈)_step048.png

おそらく,「ダイヤモンド座屈」と呼ばれるものに移行した状態の変形状況を上から見た図。
円周方向に規則的にうねり,キレイな星形となりました。軸方向にも周方向にも初期不整を与えたわけではないのに,座屈形状がこのような形になるのがとても不思議です。
文献1)で報告されているC8 typeの周方向座屈端数はn=5ですが,本解析ではn=6となりました。要素分割の程度や,設定した鋼材の応力-ひずみ関係に解析結果が依存するのかもしれません。

07_座屈状況(ダイヤモンド座屈)_step120.png

このときに抽出した軸方向の荷重と軸方向変位の関係です。
横軸は,軸方向変位を円筒の高さで割って無次元化したもの,縦軸は円筒の断面積で除してみかけの応力の次元にしたものです。本解析では,座屈後の耐荷力は,文献1)に示されている「基本経路」を最初進み,その後,分岐経路に入ったようです。座屈後にいきなり「ダイヤモンド座屈」とはならず,しばらく「提灯座屈」を続け,連続的に「ダイヤモンド座屈」へ移る結果となりました。

08_荷重変位関係.png

最期に解析失敗例。載荷点の回転自由度を拘束しなかったために,上部が回転転倒してグシャッといきました。

09_解析失敗例.png

【今回お世話になった文献】
1)後藤芳顯,張祟厚:比較的厚肉の円筒殻における提灯座屈からダイヤモンド座屈への塑性分岐過程の解析,土木学会論文集,No.605,T-45,pp.105-115,1998.10.
2)三原康子,小林卓哉,藤井文夫:軸圧縮を受ける弾性円筒シェルの後座屈解析,日本機械学会論文集(A編),77巻,776号,pp.582-589,2011.04.
posted by さといも at 16:18| Comment(0) | FEM | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月24日

橋桁防護工のファイバーモデル解析

今回のお題は,単純梁の弾塑性解析とエネルギー吸収能。
以下の文献を参考にさせていただきました。ありがとうございました。

1)猪俣貴憲,後藤芳顯,奥村徹,坂本裕紀:エネルギー吸収能に着目した橋桁防護工の合理的な設計法に関する研究,土木学会第67回年次学術講演会,T-022,pp.43-44,2012.09.
2)北健志:橋桁防護工(防護桁)の設計に関する実験的・解析的検討,JR西日本 技術の泉.

上記文献は下記よりダウンロード可能です。

文献1)
土木学会ホームページトップ>書庫 学術論文等公開>公開対象リスト>土木学会年次学術講演会概要集>2012 第67回>第1部門

文献2)
JR西日本 技術開発の取り組み トップページ>技術の泉>技術の泉 Vol.32 Invitation To Railway Technology (技術開発件名の紹介)

鉄道と道路が立体的に交差する地点で,鉄道の橋梁の手前に設置されている門型のフレームのようなもの。ときどき,トラックの荷台なんかが衝突して,高さ制限に引っ掛かり,ニュースになったりするアレです。これを「橋桁防護工」と呼ぶらしく,「橋桁防護工設計の手引き」という基準書に準拠して設計されるれっきとした構造物だそうです。知らなかった・・・。適当な寸法の鋼材を橋梁からちょっと離した適当な位置に設置しているだけなのかと思っていました。

文献1) では,支柱を除いた桁の部分のみに注目し,箱断面鋼桁のフランジ・ウェブ幅とフランジ・ウェブ厚をパラメータとして,FEM解析を実施しています。支柱位置にあたる両端は単純支持,衝突想定箇所をシェル要素,その他の部分を梁要素でモデル化しています。そして,このシェル要素の部分に剛体をぶつけたときの,荷重−変位関係が示されています。

幅厚比パラメータRと呼ばれるものが比較的大きいケース(箱断面の大きさに対し,鋼材の厚さが比較的薄いケース)では,シェル要素で定義した部分で局部座屈を生じ,耐荷力が低下して,所要のエネルギー吸収能が確保できないことが示唆されています。

この「橋桁防護工」のようなフレーム構造なら,ファイバーモデルでもある程度の答えが出てくるのでは? と考えて,骨組解析を実施してみました。
ただし,局部的に座屈するような現象は,梁理論ベースのファイバーモデルでは再現しようがないため,局部座屈の影響が少なく,降伏後に耐力低下していないR=0.30のケースの解析を行いました。

解析モデルです。1本棒モデル。左右の支柱位置の並進変位を固定。
赤の矢印のところが載荷点で,載荷点位置までの距離は左右の支点からそれぞれ,5500mm,9500mmです。載荷点位置には,反力検出のためのバネ要素を配置しています。

01_解析モデル_断面表示無.png

断面表示ON。文献1)のR=0.30の場合の寸法の断面を全区間に適用しています。
文献1)に示された,δu=918mmを強制変位として載荷点に入力し,載荷全ステップを918step(1mm/step)とし,プッシュオーバー解析(一方向押切り)。

02_解析モデル_断面表示有.png

断面内の分割。分割されたそれぞれの区画はセル(文献3)による)とかファイバーとか呼ばれるそうです。
各セルには,応力−ひずみ関係として,バイリニア型のモデルを与えています。降伏後の二次勾配には一般的な値(ヤング係数の100分の1,Es/100)を設定しています。

03_解析モデル_断面内分割.png

載荷点での変位と荷重の関係を取り出したグラフです。文献1)に示された,全塑性モーメントから算定される設計値Pu=2.281(MN)とR=0.30でのFEM解析での最大荷重Pmax=2.922(MN)を重ねて示しました。全塑性状態へ移行するときの変位や荷重,最大荷重とも,だいたい一致します。局部座屈でグシャッといかないことを仮定すれば,ファイバーモデルでもそれなりの答えが出てきます。

04_載荷点変位−荷重関係.png

次にエネルギー吸収量の比較をしてみました。
文献では,入力されるエネルギーとしてE=2.095 (MN・m,自動車荷重:250kN,衝突速度:50km/h)を仮定しています。単純に運動エネルギーを計算したら,なぜか合わない…と思いながら,文献4)を見たところ,このうち15%が車両本体で吸収されると仮定するそうです。

05_車両の衝突によるエネルギー.png

これに対し,防護桁が吸収できるエネルギーは上に示したの荷重−変位関係ので囲まれる面積となります。ファイバーモデルでの荷重−変位関係から区分求積で求めた値がE=2.216 (MN・m)となりました。
一方で,文献1)の値はE=2.312 (MN・m)で,ファイバーモデルでの解析結果を用いた値のほうが小さくでましたが,だいたい整合しています。差異を生じた原因は,応力−ひずみ関係のひずみ硬化(二次勾配)の見込み具合や,文献での接触解析の際のひずみ速度依存性にあるかもしれません。

【今回お世話になった文献】
1)猪俣貴憲,後藤芳顯,奥村徹,坂本裕紀:エネルギー吸収能に着目した橋桁防護工の合理的な設計法に関する研究,土木学会第67回年次学術講演会,T-022,pp.43-44,2012.09.
2)北健志:橋桁防護工(防護桁)の設計に関する実験的・解析的検討,JR西日本 技術の泉.
3)野中哲也,吉野廣一:パソコンで解くファイバーモデルによる弾塑性有限変位解析,丸善,2010.11.
4)市川忠久:橋けた防護工に係る設計手法の1考察,土木学会第60回年次学術講演会,4-171,pp.341-342,2005.09.
posted by さといも at 15:38| Comment(0) | ファイバーモデル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年04月30日

円筒殻の接触解析(オフセット衝突)

オープンソース動的陽解法有限要素法シミュレーションソフト「Impact」による接触解析。
2016/01/28の記事の解析モデルを少し修正して,重錘部分が鋼管芯から偏心して接触する場合をシミュレートしてみました。

解析モデルです。
図は,上から見たものです。

01.円筒殻の接触解析(e=0.50)_解析モデル.png

鋼管の材料モデルは弾塑性。
重錘は剛性の高い弾性体としました。
いずれもシェル要素を用いて定義しています。
「Impact」内での要素名称は,「Shell_BT_4」と「Shell_C0_3」です。
「Impact」では,シェル要素どうしの接触は自動的に判定されます。

まずは,鋼管径(D=114.3mm)の半分(e=0.50D)偏心して,重錘が落下した場合を計算してもらいました。
重錘先端に質量m=386kgを与えて,重錘全体に重力加速度を付与しました。
鋼管部分は両端固定としています。

解析結果。鋼管の端っこを重錘が押しつぶし,扁平になりました。

02.円筒殻の接触解析(e=0.50)_解析結果.png

03.円筒殻の接触解析(e=0.50)_解析結果_アニメーション.gif

重錘偏心量をもう少し大きくして解析。
e=0.75D (鋼管径の0.75倍の偏心量で重錘が鋼管に衝突)としてみました。

04.円筒殻の接触解析(e=0.75)_解析モデル.png

変形状況です。
重錘は鋼管の側面をかすめるようにして変形させ,落ちていきました。

05.円筒殻の接触解析(e=0.75)_解析結果_01.png

06.円筒殻の接触解析(e=0.75)_解析結果_02.png

06.円筒殻の接触解析(e=0.75)_解析結果_03.png

08.円筒殻の接触解析(e=0.75)_解析結果_アニメーション.gif

【今回お世話になった文献】
1)Dynamic Finite Element Program Suite “Impact”,Appendices:Structure of Fembic Indata Format.
posted by さといも at 22:21| Comment(0) | FEM | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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